【PM】ポートフォリオ(portfolio)

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ポートフォリオ(potrfolio)とは

 PMBOK(Project Management Body of Knowledge)における「ポートフォリオ」とは、戦略目標を達成するためにグループとして管理されるプロジェクト、プログラム、サブポートフォリオ、および定常業務の集合体を指します。

 具体的には、以下のような特徴があります:

  • 上位概念としての役割: ポートフォリオはプログラムやプロジェクトのさらに上位に位置し、それらを包括的に管理します。
  • 戦略との整合性: 組織の戦略目標を達成するために、ポートフォリオ内の各構成要素(プロジェクトやプログラムなど)の優先順位を付け、リソースを最適に配分します。
  • 多様性と調和: ポートフォリオ内には、異なる目的や性質を持つプロジェクトやプログラムが含まれます。それらを調和させて管理することで、全体として最大の価値を生み出します。

 例えば、企業全体の事業活動をポートフォリオと見立てると、個々の事業部(プログラム)やその中で進行中のプロジェクトがその構成要素となります。このようにポートフォリオは、組織全体が戦略的目標に向かって効率的に進むための枠組みとして機能します。

ポートフォリオとプログラムの違い

 ポートフォリオとプログラムの違いは、主にその目的、範囲、管理レベルにあります。以下にそれぞれの特徴を比較して説明します。

項目ポートフォリオプログラム
定義戦略目標を達成するために管理される、プロジェクトやプログラム、その他の活動の集合体。関連性のある複数のプロジェクトや活動を調和的に管理し、個別では得られない利益を最大化するための枠組み。
目的組織全体の戦略目標に資源を最適配分し、投資効果(ROI)を最大化する。特定の目的や成果(例: 製品開発やサービス提供)を効率的かつ効果的に達成すること。
範囲組織全体の戦略的視点で、複数のプログラムやプロジェクトを含む広範な範囲。共通の目標を持つ複数のプロジェクトや活動に限定される。
管理レベル戦略レベル:経営戦略や事業戦略に基づいて意思決定を行う。戦術レベル:プロジェクト間の調整やリソース配分を行う。
リソース配分組織全体で最適なリソース配分を行い、優先順位付けを実施。プロジェクト間でリソースを調整し、効率的な実行を支援。
成果物戦略目標達成による全体的な価値創出(例: 収益増加、競争力強化)。プログラム内で設定された具体的な成果(例: 新製品ライン完成)。

ポートフォリオとプログラムの主な違い

  • 視点と目的: ポートフォリオは組織全体の戦略目標達成に焦点を当てる一方、プログラムは特定の成果物や目標達成に注力します。
  • 範囲と複雑性: ポートフォリオはより広範で動的な範囲を持ち、複数のプログラムやプロジェクトを含むため複雑性が高いです。一方、プログラムは関連するプロジェクト群に限定されます。
  • 管理レベル: ポートフォリオは経営層が関与する戦略レベルで運用されるのに対し、プログラムは現場寄りの戦術レベルで運用されます。

 このように、ポートフォリオとプログラムは異なる役割と視点で組織運営に貢献しますが、それぞれが相補的な関係にあります。

ポートフォリオの実例による理解

 ポートフォリオは、組織の戦略目標を達成するために複数のプロジェクトやプログラムを統合的に管理する枠組みです。以下に具体例を挙げて理解を深めます。

実例1: 企業の製品開発ポートフォリオ

 ある製造業の企業が、戦略目標として「市場シェア拡大」と「持続可能な製品ラインの構築」を掲げています。この目標を達成するため、以下のようなポートフォリオを構築しています。

  • プロジェクトA: 新型エコカーの開発。
  • プロジェクトB: 既存製品の改良(燃費向上)。
  • プログラムC: サプライチェーンの効率化プログラム(複数の関連プロジェクトを含む)。
  • 定常業務: 製品品質管理と顧客サポート。

 これらのプロジェクトやプログラムは、ポートフォリオマネージャーによって管理され、資源配分や優先順位付けが行われます。例えば、新型エコカー開発が戦略的に最重要と判断されれば、予算や人材が優先的に割り当てられます。

実例2: 政府機関の都市インフラポートフォリオ

 ある地方政府が「住民生活の質向上」を目標に掲げています。この目標に基づき、以下のプロジェクトやプログラムがポートフォリオとして管理されています。

  • プロジェクトA: 公共交通システムのアップグレード。
  • プロジェクトB: 学校施設の改修。
  • プロジェクトC: 新しいリサイクルプログラムの導入。
  • 定常業務: 道路維持管理。

 これらは全体として都市インフラ改善に寄与するものであり、ポートフォリオマネージャーは各プロジェクトが戦略目標にどれほど寄与するかを評価し、資源配分を調整します。

実例3: 非営利団体のグローバルキャンペーンポートフォリオ

 非営利団体が「世界中で健康教育を促進する」という使命を持つ場合、以下の活動がポートフォリオとして管理されます。

  • プロジェクトA: 特定地域での災害救援活動。
  • プロジェクトB: 発展途上国での健康教育プログラム。
  • プロジェクトC: 血液提供キャンペーン。
  • 定常業務: 資金調達イベント。

 これらはすべて団体の使命に沿った活動であり、ポートフォリオマネージャーは活動間でリソース配分や優先順位付けを行い、最大限の社会的インパクトを生み出します。

ポイント

 これらの実例から分かるように、ポートフォリオは単なるプロジェクト群ではなく、組織全体の戦略目標達成に向けた包括的な管理手法です。重要な点は以下です。

  • 戦略目標との整合性。
  • 資源配分と優先順位付け。
  • リスクと成果物バランスの維持。

 これにより、組織は限られた資源を最適化しながら最大限の価値を創出できます。

PMBOK 7thにおけるポートフォリオの位置づけ

flowchart TB
    subgraph 組織戦略["組織戦略 (Organizational Strategy)"]
        ミッション["ミッション\nMission"]
        ビジョン["ビジョン\nVision"]
        価値["価値\nValues"]
        目標["戦略的目標\nStrategic Objectives"]
    end
    
    subgraph ポートフォリオ["ポートフォリオ (Portfolio)"]
        ポートフォリオ管理["ポートフォリオ管理\nPortfolio Management"]
        資源配分["資源配分\nResource Allocation"]
        優先順位["優先順位付け\nPrioritization"]
        バランス["ポートフォリオバランス\nPortfolio Balancing"]
    end
    
    subgraph プログラム["プログラム (Programs)"]
        プログラム1["プログラム1\nProgram 1"]
        プログラム2["プログラム2\nProgram 2"]
    end
    
    subgraph プロジェクト["プロジェクト (Projects)"]
        P1["プロジェクト1\nProject 1"]
        P2["プロジェクト2\nProject 2"]
        P3["プロジェクト3\nProject 3"]
        P4["プロジェクト4\nProject 4"]
    end
    
    subgraph PMBOK7性能領域["PMBOK7 性能領域 (Performance Domains)"]
        ステークホルダー["ステークホルダー\nStakeholders"]
        チーム["チーム\nTeam"]
        開発アプローチ["開発アプローチ\nDevelopment Approach"]
        計画["計画\nPlanning"]
        プロジェクト作業["プロジェクト作業\nProject Work"]
        デリバリー["デリバリー\nDelivery"]
        測定["測定\nMeasurement"]
        不確実性["不確実性\nUncertainty"]
    end
    
    組織戦略 --> ポートフォリオ
    ポートフォリオ --> プログラム
    ポートフォリオ --> プロジェクト
    プログラム1 --> P1
    プログラム1 --> P2
    プログラム2 --> P3
    プログラム2 --> P4
    プロジェクト -.-> PMBOK7性能領域
    
    classDef strategy fill:#d4f1f9,stroke:#05a,stroke-width:2px
    classDef portfolio fill:#ffe6cc,stroke:#d79b00,stroke-width:2px
    classDef program fill:#d5e8d4,stroke:#82b366,stroke-width:2px
    classDef project fill:#fff2cc,stroke:#d6b656,stroke-width:2px
    classDef domain fill:#e1d5e7,stroke:#9673a6,stroke-width:2px
    
    class 組織戦略,ミッション,ビジョン,価値,目標 strategy
    class ポートフォリオ,ポートフォリオ管理,資源配分,優先順位,バランス portfolio
    class プログラム,プログラム1,プログラム2 program
    class プロジェクト,P1,P2,P3,P4 project
    class PMBOK7性能領域,ステークホルダー,チーム,開発アプローチ,計画,プロジェクト作業,デリバリー,測定,不確実性 domain

 PMBOK第7版では、ポートフォリオは組織戦略とプロジェクト実行の間を繋ぐ重要な役割を担っています。上記のダイアグラムで表現したように、PMBOK第7版におけるポートフォリオの位置づけの主なポイントは以下の通りです。

  1. 組織戦略との連携
    • ポートフォリオは組織のミッション、ビジョン、価値観、戦略的目標から直接影響を受ける
    • 組織の戦略的方向性を実現するための手段として機能
  2. 上位管理レベル
    • プログラムやプロジェクトの上位に位置する管理レベル
    • 複数のプログラムやプロジェクトを包含する
  3. 主要機能
    • 資源配分:組織の限られたリソースを効果的に配分
    • 優先順位付け:戦略的重要性に基づいてイニシアチブの優先順位を決定
    • ポートフォリオバランス:リスクとリターン、短期的・長期的取り組みのバランスを最適化
  4. プロジェクト・プログラムとの関係
    • ポートフォリオはプログラムとプロジェクトを選択、優先順位付け、監視する
    • これらのプロジェクト/プログラムは、PMBOK7で定義された8つの性能領域に基づいて実行される

 PMBOK第7版では、プロジェクト中心の視点から価値提供の視点へと重点が移行し、ポートフォリオ管理においても「価値創出」が中心概念となっています。

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